2018年5月14日月曜日

ミセスは未定(仮)。その12。


ラーメン屋さんから場所をカフェに移した後、私は意を決して、谷崎さんのお母様からのお手紙を開封しました。

「息子を弄びやがって!このデブス!」と罵倒される覚悟で、達筆な文面に目を通したのですが、とりあえず表立っての辛辣な言葉は皆無だったので、私はほっとしました。しかし一文一文を噛みしめるように拝読すると、文面からはお母様の静かな怒りと言いますか、これは私を批難しているのだろうか…と感じ取れるような、そんな控えめな尖りが、私の心を突き刺しました。

お手紙には、一般的な内容から、宗教や信仰心についてなどの、かなりデリケートな内容も記されてありました。一般的な内容でしたら、皆様にお伝えすることに支障はないと思います。しかし特に宗教などの、細心の注意が必要な案件についての内容を、詳細にお伝え致すのは気がひけますので、恐縮ですが、要点のみをお伝えできればと思います。

谷崎さんのお母様のお手紙は、儚い春を思わせる繊細な便箋、読む者を圧倒するような美しい文字、聡明で博識がある方なのだなと感じさせる言葉遣いなど、とにかく素敵なお手紙でした。

時候の挨拶から始まったお手紙の最初の関門は、まず謝罪でした。

「この度の我が家の仕来りを知り、嘸かし驚かれたと思います。また出来の悪い愚息のことですから、段取りもなく告白したのだと思います。本当に申し訳ありません」

そして謝罪の後は、私を過剰な程、べた褒め。何か心にひっかかる内容でした。べた褒めの言葉は、あまりに過剰ですので、ここで記すにはお恥ずかしいため、略させて頂きますが、以下のような感じです。

「優しく綺麗な心をお持ちのお嬢様だと感じた」
「初めてお会いした時に感じた、ふみよさんの素敵な心遣いに感動した」
「ふみよさんが勤務される病院に行き、ふみよさんがお仕事される姿を見に行ったことがあるが、ふみよさんのお仕事に対する姿勢を見習いたい」(知らない間に職場に来ていたのかと思うとぞっとしました)
「息子のお嫁さんになってくださったら嬉しい」
「息子はもちろんふみよさんを大切に思っているが、本当に夫も娘、そして私も、ふみよさんのことが大好き」

一方で、

「こんなに素敵なふみよさんが、宗教一つで別れを選択するはずがないと信じています」
「きっと聡明なふみよさんでしたら、息子の内面で判断してくださることでしょう」

という、何とも感情に靄がかかるような内容もありました。

最後は、宗教についてです。

信仰されている宗教の歴史や、谷崎家の信仰心などを鮮明に説明してくださった後、

「決してやましいものではありませんので、ふみよさんのご心配は杞憂に終わるでしょう」
「何も不安に思われることはありません」

私のもやもやを宥めるような、文字が並んでいました。

お手紙を読み終えた私に谷崎さんは、こうおっしゃいました。

「とりあえず近々実家に来て欲しい。ちなみに俺はふみよちゃんと別れるつもりはないから」

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