2018年3月30日金曜日

トライアルで、TANIZAKI。その5。


私の悪い予感は、的中してしまいました。

谷崎さんの留守中に少しでも新妻っぷりを発揮するため、洗濯物を畳んでいた私の眼球を突如ブチ抜いたのは、一人暮らしの男性の自宅には不釣り合いな、小さな仏壇でした。

通常であれば、仏前の前で姿勢を正して手を合わせるところですが、何故だかそのような気持ちになれず、不謹慎ではありますが、ただただ不可解な気持ちと不安が、私のポジティブ力を奪っていきました。他人の自宅というアウェイな空間で一人でいると、どうしても上手く気持ちを処理できなかったので、谷崎さんの仕事終わりの時間まで、自宅に帰宅しました。ここまでが、前回のあらすじです。

しかし安寧のホームである我が家であるにもかかわらず、時間が経てば経つほど、焦燥感のような恐れが心を占拠する始末です。「谷崎さんは、いついかなる時も、ご先祖様を敬う方なのだな」とプラスの方向に捉えられるよう努力したのですが、やはりどうしても「何故ご実家が健在の一人暮らしの青年の自宅に、仏壇があるのか」という疑問が、拭えませんでした。

この時、絶対に考えないように、言わない、思わないようにしていたある一つの仮説が、私の思考を占めつつありました。私は無知ですし、世間の常識とはかけ離れている回路が脳内にありますので、何事も一方的に偏見を持ってはいけないと心がけています。しかし、どうしても混乱している私は、ある一つの仮定を想像してしまい、身動きとれずにいました。でも口に出したが最後、何が何でも考えまい、言うまい、思うまい、呼吸を止めるかのように、踠いていました。

「あれ、なんで?今日餃子作ってくれるんじゃなかったの?」

本当は自宅で引きこもっていたかったのですが、谷崎さんの帰宅時間が迫っていたので、私は重い足取りで谷崎家に戻りました。実はこの日、夕食餃子を作る約束をしていたのですが、なにせこの暗黒状態でしたので、餃子を作る気力はなく。代わりにデパートのお惣菜屋さんで餃子を購入した私に、谷崎さんは苛立ちを隠せないといった口調でした。

「ごめんなさい、作れませんでした…」
「え?なんで?どっか具合悪いの?」
「…ごめんなさい」
「はあ〜(盛大なため息)。具合悪いんだったら仕方ないけど」
「明日は必ず作りますので…」
「ところでさ、俺のクローゼット開けたよね?なんで?」

はい…と言ったつもりが、何故か言葉になりませんでした。心臓が尋常ではないほど震え始めた私は、半ば尋問のような谷崎さんの追及に、なんとか振り絞って「勝手に開けていいとおっしゃってたので、乾いた洗濯物をしまおうと…」と言葉を繋ぎました。

「…それなら見たよね?」
「はい…」
「言わなくてごめん…」
「宗教…ですか?」
「…うん」

具体的な名を記載することはできませんが、谷崎家は新興宗教を信仰している。

そう、発覚しました。

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