2017年12月5日火曜日

それはちょっと困ります。その22。


「いつものふみよちゃんは、おとなしくて、ニコニコしているのに…」

本音を言おうとすると、いつも谷崎さんはこうおっしゃいます。

「なんでここ最近ずっと俺たち揉めちゃうか…わかる?」
「…」
「多分、ふみよちゃんが変わったからだと思うよ」
「それは…私が以前よりも、自分の意思を口にしているからですか?」
「うん、それが一番だと思う」
「…」
「だってふみよちゃんがはっきり言わなかった時は、いつもうまくいってたじゃん。いつもニコニコしてたし」
「…」
「前だったら、多分今日も、普通に掃除してくれたと思う」
「…はっきり言わないほうが、いいということですか?」
「うん」
「私がはっきり言うことで、谷崎さんを傷つけてしまったでしょうか…」
「全然。ふみよちゃんのはっきり言うは、人を傷つけるようなはっきりではないから、そこは大丈夫」
「…」
「でも、人によるよね。はっきり言うのが似合う人と、似合わない人。ふみよちゃんは後者で、はっきり言うのが似合わないと思う」
「…」
「だからはっきり言うのは、やめてほしい」
「…」
「はっきり言い合って、仲違いするの嫌だし」

そうおっしゃった谷崎さんは、年季と黄ばみが板についたまな板の上にパンを盛り付け、これまた年季と黄ばんだ板についたマグカップで、コーヒーを飲み始めました。「おいしい。買ってきてくれてありがとう」と、嬉しそうにパンを食べる谷崎さんを、ぼんやり見ていた私は、もうどうしていいかわかりませんでした。

全て揉める原因を作ったのは、私。このまま摩擦を生み出さないためには、私が口を噤んで、谷崎さんの気持ちに添えばいいだけ。

谷崎さんの言葉を何度も何度も転がしても、腑に落ちませんでした。部屋の空気が悪いからか、それとも納得いかないからなのか、谷崎さんの家にいると息苦しさを感じてしまい、これ以上ここにいるのが苦痛でした。

ブログランキングに参加しています。応援していただけると嬉しいです。
にほんブログ村 恋愛ブログ 婚活・結婚活動(本人)へ

  

0 件のコメント: