2017年6月13日火曜日

腐がバレた日。その14。


手付かずのグラスの氷は、すっかり溶けてしまいました。

「どうして…ボーイズラブが好きなの?」

別に私は、谷崎さんに、私の道ならぬ趣味趣向を理解して頂きたいとか、受け入れて頂きたいとは、全く思っていませんし、望んでもいません。不本意ながらもカバンの中のBL小説が御用になってしまった以上、私の腐について、説明はするつもりですが、それを丸ごと谷崎さんに許容して頂こうとは、微塵も考えていません。それに、谷崎さんが声を引きつらせながらおっしゃった上記の言葉で、谷崎さんにとってBLは、理解不能なジャンルだということを、痛感しました。

「気づいていたら堕ちていたので…確かなことは言えませんが…」
「…」
「ただ…男女の恋愛とはまた違い、成就までの道のりに、障害が多くハードルが高い描写が多いので、その分情熱的な恋愛や、切ない心情が描かれていまして…」
「…」
「個人的に、その点が魅力的だなあと…」
「…」
「難しいかと思いますが、ボーイズラブは、男性同士の恋愛を描いた少女漫画と考えて頂ければ…」
「…」
「私はあくまで、二次元の男性方の恋愛が好きなのであって、現実の男性方で妄想することは一切ありません。個人差がありますが、基本的には、ボーイズラブが好き=現実の男性同士の恋愛が好き、ではないことをご理解頂ければ…」
「うん…わかった」

小さく頷かれた谷崎さんの顔は、心なしか強張っているように見えました。

「今日は帰るね、トイレ貸してくれてありがとう」

長い長い沈黙の後、静寂を破ったのは谷崎さんのご帰宅宣言でした。まだお茶も飲まれていないにも関わらず、早々と身支度を整えられた谷崎さんは、私に有無を言わせない、張り詰めた雰囲気を纏っていました。辛うじて私は「駅までお送りします」と言いましたが、谷崎さんに「いや、大丈夫」と言われてしまいました。その空気は、私を拒絶しているようでした。

「今日はありがとう」と谷崎さんはおっしゃって、マンションの玄関ホールを出て行かれました。私はその背を呆然と見送りました。

ボーイズラブは、万人に受け入れて頂けるジャンルではありません。腐女子として名乗る以上、自身の腐と世間の思考に、隔たりがあることは重々承知しておりましたし、公にせず細々と活動していくのが当然で、マナーだと考えております。ですから本当は、谷崎さんに、私がどっぷりボーイズラブ漬けだということを、知られたくなかったです。人知れず静かに活動をし、たまに同じ腐の同志と交流をする…それだけを望んでいたのに。

谷崎さんの反応は予想通りとはいえ、一抹の寂しさがありました。

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