2017年1月17日火曜日

お母さんは心配症。谷崎さん その23。


私の頭の中では、何故か稲葉さんが、「何をどこまで信じればいいか 君が僕に教えてよ Oh」とシャウトしていました。

各々ビールを3杯程頂いた頃でしょうか。とりあえず様子伺い要員である軽めのタパスで、一通りテーブルに興を添えてはいましたが、そろそろここで一度、炭水化物的な物を要する雰囲気になりつつありました。「メインってことで、パエリアいっときます?」と谷崎さんと意気投合したところで、私は店員さんにメニューを頂き、おすすめのお料理を伺いました。が、その間谷崎さんは、何度かスマートフォンを取り出しては、どなたかとやり取りをされているようでした。

当初私は、谷崎さんは、ビールからワインにシフトチェンジしたことで、一時の気の迷いから生還されたのだと信じて疑いませんでした。正気に戻った途端、谷崎さんは、目の前のデブスと米談義をしている自分が許せなくなり、その嘆きと苛立ちをどなたかにぶつけていらっしゃるのかと思いました。のんきに海鮮パエリアをオーダーした瞬間に、文字を打つ谷崎さんの指先が更にヒートしそうだなと、私は動揺しつつありました。しかし谷崎さんは、「すみません、ほんっとすみません」と何度も謝られるので、次第に私はもしや何か急用でもあったのでは…と、パエリアどころではなくなっていました。

「お仕事ですか?お忙しいところ、ごめんなさい」
「あ、いえ!全然忙しくないっす!すみません、気を遣わせてしまって…。あの…」
「どうされました?」
「いや、その…」

その瞬間、谷崎さんの電話が鳴りました。

私に気を遣ってか、谷崎さんは電話に出ず、テーブルの上で震えるスマートフォンを、躊躇いがちに眺めていました。私は特に気にしていないので、「お気になさらず、出てください」と言い、その間にお手洗いに立とうと思いました。しかし谷崎さんは、何故か電話に出ませんでした。不思議に思っていると、谷崎さんは静かにこうおっしゃいました。

「お母さん…なんすよ」

マジかよ。

その瞬間私は、熱々アヒージョに顔面からダイブしそうになりました。

「ほんっとすみません!何かさっきからライン通知が多いなと思ってたら、家族でめっちゃトークが盛り上がってて、」
「…」
「今俺がふみよさんに会ってることを知ってるからか、お母さんと妹が、めっちゃフィーバー中なんすよ」
「…」
「様子を知りたいんだろうと思うんすけど、まさか今電話かけてくるとは…」
「…」
 「もー、ほんっとうちのお母さん、ありえないっすよ。申し訳ないっす」

電話は、途切れることなく鳴り続けていました。

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